Wedding Report 「結婚式でこんな体験ができるとは思わなかった」こだわりの詰まったワイナリーウェディング

「間違いなく今までの人生で一番幸せな日になりました」

そう語ってくれたお二人。

息子さんと一緒にご家族としての思い出を作りたい、と2023年10月、山梨の広大なワイナリーでのファミリーウェディングを実現されました。

結婚式当日は、心配されていた雨はどこへやら、富士山も雄大な姿を見せてくれ、雲ひとつない見事な快晴となりました。

photo : Masako Noguchi


今回、アシスタントとして結婚式の現場をお手伝いしながら、お二人のエシカルウェディングに密着取材をしました。後日あらためてお二人にインタビューもさせていただいたので、結婚式当日の裏側や、人と地球に優しいこだわり、結婚式を体験した後のお二人の心境の変化についてご紹介します。(取材・執筆:Emiri Takamatsu)

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ブドウ畑の中で、笑顔と涙と祝福に包まれたウェディング

photo: bozphoto&styles

挙式が行われたのは、100年以上にわたるサスティナブルな農法を実践する広大なワイナリー。 観光農園ではないため、通常は結婚式に使われることはない場所です。今回はエシカルウェディングの実証プロジェクトのために、特別に許可をいただいて行われました。

お二人はサーフィン、トライアスロンなどに取り組んでおられ、息子さんもサッカー選手が夢というスポーツ大好き一家。

photo: bozphoto&styles
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普段からビーチクリーンや、プロギング (ゴミ拾い:PlockaUpp と ジョギング:Jogging を合わせたスウェーデン発Newフィットネス) にも積極的に参加していたこともあり、「環境に優しく無駄を出さない結婚式」に共感して、このプロジェクトのモニターに応募したのだそう。

富士山をバックに挙式前のファミリーショット
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お二人がワイナリーで記念撮影をされている間に着々と準備が進んでいきます。

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スタッフは挙式のセッティングや流れの確認中
photo : Emiri Takamatsu
photo:Masako Noguchi
会場に特別に許可をいただいてお二人の愛犬もスタンバイ
photo : Masako Noguchi
新婦が選んだドライフラワーで作られたオーガニックブーケ
photo : Emiri Takamatsu

いよいよ挙式直前となったところで、お二人にお気持ちを伺ってみました。

ヘアセットやメイクアイテムも環境と肌に優しいもので
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「とても楽しみです。準備の期間からずっと楽しかったので、終わってしまうのが寂しいくらい」

息子さんもちょっぴり恥ずかしそうに「楽しみだけど、披露宴で読むお手紙があってちょっと緊張してる」

バナナペーパーのオリジナル結婚証明書はブドウのデザイン
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お二人のご家族、親しいご友人が駆けつけてくださり、お二人のために作られたオリジナルの結婚証明書に、ブドウの実のスタンプをひとり一つずつ押していただきました。そして、お二人の人生が実り多きものとなりますようにとの願いを込めて、ご署名をお願いしました。

ゲスト参加型の結婚証明書には、バナナの繊維からつくられ、フェアトレードにつながり環境にも優しいバナナペーパーを使用。スタンプはワインコルクを再利用して作られています。

いよいよ挙式のスタート。新郎のリードで階段をゆっくりと降りながら、ゲストが待つ会場へ進むお二 人。

photo: bozphoto&styles
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誓いの言葉は、事前にご家族とご友人に考えていただいた「お二人に誓って欲しいこと」をそれぞれの代表の方に順番に読み上げてもらいました。

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「・・・ということを誓ってくれますか?」
その内容に、時には笑い、 時には涙もこぼれ、
「はい、誓います」 と答えるお二人。

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結びは お二人の息子さんから。

「ずっと夫婦仲良くしていってくれますか?
 ずっと僕を愛してくれますか?」

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ゲストからは拍手喝采の応援が。

お二人の答えは

「もちろん、誓います!!」 

会場は温かい雰囲気に包まれました。

続いて指輪交換へと進みます。
指輪は、新婦手作りのリングバスケットに乗せ、息子さんと愛犬のコタローくんがお二人に届けてくれました。

(ペットの入場には特別に許可をいただきました)
photo: bozphoto&styles

結婚証明書に署名する際の署名ペンには、パレスチナのオリーブの木から作られたフェアトレードのペンが使われました。

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ゲストの皆様と作り上げた、結婚証明書の完成です。

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挙式後、ご友人からは手作りのお花のレイのサプライズプレゼントが。 その後、そのままブドウ畑の前で全員集合写真撮影を行いました。

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挙式のご感想は?
と伺うと
新婦様は「一緒に作り上げられたことが嬉しかった」とのこと。

「パッケージ化されている結婚式が多いので、そういうものだと思っていたら、そうではなく、今回は準備 の段階からスタッフの皆さんと一緒に、一から考えながら作り上げられたことがすごく嬉しかったです。『自分たちも参加している』という実感があって。一緒に良いものを作り上げようとしてくれているスタッフの方々の存在があったからこそ、良い式になったと思います」

photo : Emiri Takamatsu

思わず溢れた、家族とゲストへの感謝の想い

披露宴は、フレンチレストランのラ・キュイエットで行われました。繊細でサプライズ感のある料理に定評のあるオーナーシェフが営む、レトロアンティークなレストランの目の前には、シェフが自ら手がけるブドウ畑がひろがっています。

photo: bozphoto&styles

披露宴にも、たくさんのエシカルなこだわりが詰まっています。

・地産地消のオーガニック料理&ワイン、サングリア
・テーブルクロスとトーションは、サーキュラーエコノミーコンセプトのものを使用
・引き菓子は、山梨の養鶏農場のオーガニック卵を使用したバウムクーヘン
・引き菓子のラッピングは、リユースの布を使った風呂敷包に
・引き出物はSDGsのカタログギフト、ギフトバッグはFSC認証のクラフト紙

photo: bozphoto&styles

披露宴は次々と運ばれるお料理を味わいながら、お二人との談笑の中、和やかな雰囲気で進んでいきました。

photo : bozphoto&styles
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ゲスト全員に地産地消のフルーツをガラス瓶にいれていただきました 
photo : bozphoto&styles
そこへオーガニックワインを注いで完成したサングリアをゲストと一緒に味わいました
photo: bozphoto&styles

そろそろお開きが近づいた頃、息子さんがお手紙を読んでくれました。

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「お父さんとお母さんの子供でよかった」
「いつかサッカー選手になってフランスに行くのでよろしくお願いします」


会場は応援の拍手と笑顔と涙に包まれました。

結びは新郎新婦様からのスピーチ。

photo: bozphoto&styles

「泣くつもりは全くなかったけれど、みんなの顔を見てたら、ついつい泣いてしまいました」と新婦様。

「最初は両親への感謝はあらためて伝えなくてもいいかなと思っていたのですが、挙式をしたことで感謝の気持ちが湧いてきて。当日、楽しそうに参加してくれている私の両親や主人のご両親を見ていたら、自然と感謝の言葉が出ていました」

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それを聞いた新郎様は、新婦様の当初の予定と違う内容のスピーチに驚いたそうです。予定していた言葉が飛んでしまい、アドリブになってしまいましたが、やっぱりみんなに「ありがとう」を伝えたかったとのこと。

息子さんにとっても、そんなお二人のスピーチがとても心に響いたそうです。

「お母さんとお父さんが、ぼくを大切に思ってくれている言葉を言ってくれたから泣いちゃった」

photo: bozphoto&styles

新郎様の胸にしがみついたまま、しばらく号泣がとまらなくなってしまった息子さん。ゲストもスタッフも、 もらい泣きしてしまい、しばらくお開きに進めることができないほどでした。

涙よりも笑顔で楽しく過ごそうね、と言って迎えた当日でしたが、蓋を開ければ、これまでの感謝の想いが溢れた優しい時間になりました。

お開きの後スタッフ全員で
photo: bozphoto&styles

結婚式で使うものの背景を知ることで、生まれた変化

後日のインタビューでお二人に「結婚式の中で印象的だったことは?」と伺うと、意外な答えが返ってきました。

「どの場面も印象的でしたが、式の一週間前に挙式会場となるワイナリーでブドウの収穫体験をしたり、ブーケのお花を提供してくださるオーガニックフラワーショップや、引き出物のバウムクーヘンに使われるオーガニック卵をつくられている養鶏農場を見学したりしたことが印象に残っています」

このエシカル体験ツアーは、結婚式で使われるものや、会場となる場所の背景を知ってほしい、というエシカルウェディング協会スタッフの想いと会場やショップのご理解とご協力をいただき実現することになりました。

山梨のオーガニックフラワーショップにて
photo : Masako Noguchi

挙式会場となるワイナリーでは、職人さんのお話を聞いて感動したそう。

新郎様「職人さんたちが愛情とプライドを持ってお仕事をされていることに感動しました。一房ずつ手作業で摘んで、使える粒を選定して。ワインができる過程を知ると、大事に飲もうという気持ちになる。それに通ずるものの見方も変わるし、そこで結婚式を挙げられる喜びもより一層感じました」

photo: bozphoto&styles

普段何気なく買っていた花や卵、お肉への考え方も変わったと言います。

新郎様「実は、今まで “オーガニックは値段が高い” という印象があって、あまりいいイメージを持っていなかったんです。でも、オーガニックのフラワーショップや養鶏場を自分たちの目で見て、育てている現場とこだわりの理由を聞いて、初めて納得できることがありました」

自然循環農法を取り入れた、オーガニックファーム黒富士農場にて
photo: Masako Noguchi

新婦様「養鶏農場でお話を聞いた時は、アニマルウェルフェアという、命をいただくまでの動物に対する考え方があるのも知らなかったし、日本が後進国で、海外のほうが進んでいるという情報は、普段ニュースを見ているだけでは分からなかった」

新郎様「お肉や卵を育てるまでの過程に目を向けたことで、生産性や効率ではなく、最後まで生きものとして育てる大切さを感じました」

さらに結婚式だけでなく、その後の生活にも変化があったというお二人。

photo: Masako Noguchi

「これからの私たちの生き方、日々の購買意識も変わったと思います。仕事や時間に追われてしまう中でも、ものがつくられた背景を想像できるようになりました。興味を持って、商品のラベルを見るようになったり。どこで作られているんだろう、どうやって作られているんだろうと考えるようになりました」

結婚式は、私たちの新たな出発地点

最後に、お二人にとって結婚式はどんな日になったのかを伺いました。

新婦様「出発地点、でしょうか。二人の絆だけではなく、ゲストや家族との関係、これからの自分たちの生活や価値観が良い意味でリセットされたように思います。ここから新たに築き上げていきたいと思いましたし、子供や主人への感謝を改めて感じました」

新郎様「間違いなく今までの人生で一番幸せな日になりました。これからどんどん幸せな日が上書きされていくと良いなと思います」

前泊でお世話になったシャトレーゼにらさきの森で記念撮影
photo: bozphoto&styles

【あと書き】

結婚式という、人生の大きな節目を体験したお二人。結婚式当日も、結婚式から時間が経った今も、一点の曇りもなく「楽しかった」「幸せだった」と話す姿が印象的でした。それはきっと、お二人の人柄と、「心からやりたい」と思うことを、自分たちも参加しながら実現できた実感、そして関わってくれた人たちの想いを知る機会があったことが大きかったのだろうなと思いました。

多くの結婚式は家族・友人など “これまで関わってくれた人” に焦点が当たるのに対し、エシカルウェディングは、“物や自然環境、結婚式に関わってくれたスタッフや生産者さんにまで” 範囲が広がります。

大事に作られたものの背景や人の想いを知ることで、感謝の気持ちが湧いてくる。家族や友人に限らず、これから大切にしたいものが増えていく。エシカルウェディングは、そのような機会を与えてくれるものかもしれないと感じました。


この記事を書いた人: Emiri Takamatsu

1993年・岩手県生まれ。フリーライターとして、Webメディアや雑誌にて活動中。ライター活動の ほか、シーグラスアートブランドの運営も行っている。

ethical point

・オーガニックで作られた化粧品でのメイクアップ
・フロンガススプレーをつかわずにヘアセット
・サスティナブルな農法で100 年以上の歴史をもつワイナリー
・地産地消オーガニックで作られた料理とワイン・ドリンクでのおもてなし
・バナナペーパーを使ったオリジナル結婚証明書
・パレスチナのオリーブの木で作られたフェアトレードの署名ペン
・地産地消のオーガニックフラワーを使ったブーケとテーブル装花
・リユースのガラス瓶による装飾
・装飾した花はゲスト全員にギフトとしてプレゼント
・サーキュラーな仕組みで作られた廃棄にならないテーブルクロスとトーション
・平飼い鶏のオーガニック卵から作られたバウムクーヘン
・FSC認証の森林保護につながるギフトバッグ
・リユースの布を使ったギフトラッピング
・ウェディングアイテムのルーツをたどるエシカルツアー

Wedding Staff

  • Photograph:Tsutomu Fujita
  • Hair&make-up:Maki Fujita
  • Planner:Yuri Kaji, Yuka Sogabe
  • Captain:Shotaro Wada
  • Flower:Mie Yoshida, Mizuho Tsuruoka
  • Assistant:Emiri Takamatsu, Saori Utsumi, Mayumi Takahashi, Yuji Iwasaki
  • Design:Eriko Kunishima
  • Fair Trade Pen:Chie Takahashi
  • Sound Art:Masaru Noguchi
  • Coordinator & Mc:Masako Noguchi
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