Special Interview 米ヶ田大樹さん -「コメフィルム代表」ビデオグラファー-
エシカルウェディング協会のメンバーに、日々の活動内容についてインタビュー。今回は、熊本出身のフリーランス映像クリエイター・米ヶ田大樹さんの登場です。「すべてのものを美しく」をテーマに、風景とふたりが溶け合う瞬間を追い続ける米ヶ田さん。穏やかな語り口の奥には、カップルへの深いまなざしと、人生のストーリーごと映像に残したいという静かな情熱があります。映像との出会いから独立、そして父親になって広がった視野まで、その素顔に迫ります。
“音楽好きの青年”から、映像の世界へ

米ヶ田さんのキャリアの出発点は、ウェディングでも映像でもなく、「音楽」にありました。働きながら音響の道を志し、独学で勉強を始めたある日、映像と音響を横断する資格があることを知ります。勉強を進めるうちに映像の面白さに気づき、やがて「ミュージックビデオを作りたい」という気持ちが芽生えたそうです。
「映像会社の求人を探していたら、福岡にある映像制作会社がオープニングスタッフを募集しているのを見つけて、さっそく応募しました」。それが2014年のこと。その会社ではTVCMをはじめ幅広いジャンルの映像を制作しており、入社後に配属されたのはウェディング部門。音楽好きの米ヶ田さんがたどり着いたのは、結婚式という人生の特別な一日を映像に刻む仕事でした。
2018年に東京へ異動し、2022年にフリーランスとして独立。現在はウェディング関連のお仕事が全体の約4〜5割を占め、残りはほかのジャンルの映像・写真制作を手がけています。
「すべてのものを美しく」という一本の軸
米ヶ田さんのインスタグラムを見ると、どの写真にも共通した世界観が漂っています。風景とふたりが溶け合うような奥行き、光の使い方、構図の静けさ。写真でありながら、「映像の一コマ」のように見えるのが印象的です。

「自分の中のざっくりした大きなテーマとして、『すべてのものを美しく』というのを掲げています。絵の綺麗さ、例えば風景とその中にいるおふたりが合わさった時の美しさを表現したいというのが一番ですね」。
撮影の現場では、ただ「歩いてください」と言うのではなく、「楽しそうな表情で歩いてみてください」と具体的なニュアンスを伝えるようにしているといいます。カップルの気持ちををほどよく持ち上げながら、自然な表情を引き出していく。そのさりげない工夫の積み重ねが、あの柔らかな世界観を生み出しているのでしょう。


「一定の距離を取りすぎると、引き出せるものも引き出せなくなってしまう。なるべくお話をして、敬語を使わずにお話ししてもらえるような環境になれば、より良いものが引き出せると思っています」。
依頼してくれるお客様は、こだわりのある方ばかりではありません。「なんとなくいい感じにしてほしい」という方も多いといいます。そんな時は過去の作品を一緒に見ながらヒアリングを重ね、ふたりのエピソードやゆかりのある場所を提案していきます。デートスポットやプロポーズの場所で撮影することも。
ふたりだけが知っている場所に立ち、ふたりだけが知っている表情を引き出す。それが米ヶ田さんのこだわりであり、大切にしていること。

壇上に呼ばれた日の忘れられない思い出
10年以上この仕事を続けてきた米ヶ田さんに思い出深いエピソードを聞くと、少し表情が和らぎました。
「エンドロールの上映中にゲストの方が泣いていたり、笑ってくれたりと、感情の変化が見えた時が一番やっててよかったと思う瞬間です」
なかでも忘れられないのが、前撮りからプロフィール映像まで一貫して担当させてもらったカップルの結婚式。新郎が謝辞の中で米ヶ田さんの名前を呼び、壇上まで招いてプレゼントを手渡してくれたそう。「1人の映像スタッフがそこまでしてもらえることはほぼないので、とても嬉しかったですね」。
一方、大変だった仕事として挙げてくれたのは、長野県上高地でのロケーション撮影。車では入れない山奥へマイクロバスで向かい、スーツに革靴のまま、カメラ機材一式を担いで登ったそうです。「なかなかそんなロケーションはないので、思い出に残っています」と米ヶ田さんは笑います。山々を眺めるふたりの後ろには、スーツ姿の米ヶ田さんたち撮影クルーがいたなんて想像がつきませんね。ポーズを決めるわけではなく、ただ山を眺めるナチュラルな姿が、さらにそう思わせてくれる一枚です。

一人の人生のストーリーを追いたい

映像制作会社に入社した当初は、新郎新婦の多くが自分より年上の「大人」に見えたといいます。今では自分の方が年上になりつつある。その変化は、新郎新婦との向き合い方にも影響を与えています。
「昔はもっと『丁寧に』と思っていたのが、今はよりフランクにお話しして、二人を和ませるような対応ができるようになったかなと感じています」。2022年に結婚したことで、新郎としての視点も加わりました。「新郎ってこんな風に怒られるんだな」と、式の現場でこっそり共感していることもあるのだとか。
今後の展望を聞くと、「テーマは変えずに継続していくことと、海外での撮影にも挑戦したい」と語ってくれました。そしてもう一つ、お子さんが生まれたことで生まれた新しい視点もあるといいます。
「結婚式から子供が生まれるまでといった、一人の人生のストーリーを追っていきたいなと感じるようになりました」。式の日だけを切り取るのではなく、その前後に続く長い時間ごと映像に残していきたい。親になった今だから見えてきた視界がそこにあります。


エシカルウェディング協会の理事である野口雅子さんも、そんな米ヶ田さんと一緒に取り組みたい新しいプロジェクトを構想中です。それは、結婚式を選ばない方が増えるなか、親御さんの思いや命の誕生を映像に残す「あなたが生まれた日に」というタイトルのストーリー映像ブック。「ぜひやりましょう。いいタイトルですね」と米ヶ田さんはすぐに頷いていました。
一人の人生のストーリーを追いたい
エシカルウェディング協会については、前職時代に野口さんとともに仕事を重ねるという縁があって、独立を機にメンバーへ参加したといいます。「エシカルウェディングは、一般的なウェディングに比べて制約が少なく自由度が高い。循環を考えた衣装や装飾など、他とは違うなと感じています」。
協会メンバーの中で最近注目しているのは、フリープランナーの鍜治友里さん。
「一歩、二歩先を読んで動いてくださるので、新郎新婦も困らないし、僕らもとてもやりやすい。頼りになる存在だと思っています」。
クリエイターとして生きる上で、日々のインプットは欠かせないもの。それについて尋ねると、今も変わらず音楽やMVを見ているそうです。最近は韓国の映像作品に刺激を受けることが多いとのこと。「映像のクオリティが日本より高いので」と、刺激を受けながら研究を続けています。



音楽が好きだった青年が映像に出会い、ウェディングの現場でふたりの物語と向き合い続けて10年以上。「すべてのものを美しく」という軸はぶれないまま、米ヶ田 さんの目に映る景色は豊かに広がっています。新郎から壇上に呼ばれた日の喜びも、上高地の山道を登った記憶も、そして大切な家族との絆も、これからの作品に溶け込んでいくのでしょう。

【Profile】
米ヶ田 大樹(めかた・だいき)
「コメフィルム」代表 ビデオグラファー
熊本県出身。2014年にウェディング映像会社へ入社し、福岡・東京での勤務を経て2022年にフリーランスとして独立。ウェディングをはじめ幅広い映像・写真制作を手がける。「すべてのものを美しく」をテーマに、風景とふたりが溶け合う瞬間を追い続けている。エシカルウェディング協会メンバー。
取材・文:Hanayo Tanaka